人が怖いあなたへ ─ HSPの生きるすべ

メンタルヘルス

人が怖い。

会う前から胸がざわついて、会っている最中も、どこかで自分を見張っている。帰宅すると、どっと疲れて動けない。ひとりになったのに、頭の中だけがまだ会議を続けている。

「気にしすぎだよ」と言われるたびに、さらに孤独になる。気にしすぎなのは自分が一番わかっているのに、止め方がわからない。そういう怖さです。

この記事は、根性論で背中を叩くためのものではありません。僕自身、メンタルヘルスに10年以上通い、薬物療法を受けながら、なんとか仕事を続けてきた人間です。休職期間はない。フリーランスとして、食いしばって、ありがたく仕事を続けている。たまに「よくやってるな」と思う日もあれば、たまに「もう無理かも」と思う日もあります。

最近は筋トレや鍼治療、サプリや習慣の見直しも試しています。薬だけでも、気合いだけでも足りなかった。だから手を伸ばした。そういう実感ベースで「人が怖い」状態とどう付き合うかを書いてみます。


最初に:免責事項

ここに書く内容は、医療行為や診断、治療の代わりにはなりません。薬の使用や変更、サプリの併用などは必ず主治医・薬剤師に相談してください。僕の話はあくまで「一例」で、同じ薬でも効き方や副作用は人それぞれです。


HSPは「欠陥」ではなく、刺激を深く受け取る体質の説明に近い

HSP(Highly Sensitive Person)は、ざっくり言うと「刺激を人より深く受け取りやすい気質」として語られる概念です。病名というより、傾向のラベルに近い。だから“治す”というより“扱う”が近い気がします。

言葉の意味を軽く確認するなら、ここが一番早いです。
参考:Wikipedia「ハイリー・センシティブ・パーソン」

正直、HSPという言葉に救われる人もいれば、逆に苦しくなる人もいます。「自分は繊細だから仕方ない」と言い訳の幅だけ広がることがあるからです。

それでも僕は、説明がつくだけで少し楽になりました。説明がつくと、対策が考えられる。対策が考えられると、“人が怖い”が人生の全てにならなくなる。ここが大きい。


「人が怖い」の正体は、優しさと警戒心の混合物

人が怖いときって、相手が本当に怖い人とは限りません。むしろ普通の人だったりする。なのに心だけが過剰反応する。ここがつらい。

僕の場合、怖さの中身はだいたいこうでした。

相手の表情が一瞬曇った気がする。声のトーンが少し落ちた気がする。「今の言い方、まずかったかな」と反芻が始まる。そこから先は、頭の中で勝手に裁判が開かれます。証拠もないのに有罪方向で。

HSP気質があると、この“微細な変化”を拾う精度が上がりがちです。拾えるのは強みでもあるけど、拾いすぎると自分が疲弊する。落ち葉拾いを永遠にやっているようなものです。地面はきれいになるけど、腕がもたない。

それと、日本の空気は良くも悪くも「察し」文化が強い。言葉より空気。だから敏感な人ほど、常に受信状態で生きることになる。結果、疲れる。そりゃそうです。

ちなみに「人が怖い」が長く続く場合、社会不安(対人場面で強い不安が出る状態)という言葉で説明されることもあります。ただし自己判断で決めつけず、必要なら専門家と一緒に整理したほうが安全です。
参考:Wikipedia「社会不安障害」


10年以上通院しても、仕事は続けてきた

僕はメンタルヘルスに10年以上通っています。薬物療法も受けてきました。ソラナックス、炭酸リチウム、そして緊張による手ブレを抑える目的の薬も処方されていた時期があります。

薬の話は、書くたびに迷います。効いた経験がある人ほど「これで助かった」と言いたくなるし、合わなかった人ほど「やめた方がいい」と言いたくなる。どちらも本音です。

僕にとって薬は「戦う武器」というより、底を抜かないための板でした。これがないと落ちる日がある。これがあると、落ちても浅い。そんな感覚。

フリーランスだと、休職という制度に寄りかかるのが簡単じゃない場面もあります。休めば収入が止まる。だから食いしばる。ありがたいことに仕事があるから続ける。矛盾しているようで、これが現実でした。

ただ、10年通っても「人が怖い」はゼロにはならなかった。ここが大事で、同時に救いでもあります。ゼロにならないなら、付き合い方を磨くしかない。そう思ってから、筋トレや鍼、サプリ、生活の整え方に興味が向きました。


最近試している「薬以外のアプローチ」

最近、筋トレを続けています。理由は単純で、頭の中だけで人生を回そうとすると詰むからです。人が怖いと、思考が暴走しやすい。暴走するなら、体側からブレーキをかけた方が早い日がある。

筋トレのいいところは、結果が分かりやすい点です。今日はできた、できなかった。それだけ。評価の空気が少ない。人間関係の読み合いがいらない。僕にはそれがありがたかった。

鍼治療も試しています。これは合う合わないが大きいと思いますが、僕の場合は「肩と胸の緊張が抜ける」感覚がありました。人が怖いとき、体が鎧みたいに固まるので、その鎧を外す練習として悪くなかった。

サプリについては、期待しすぎない方がいいと思っています。効くとしても補助。合わない人もいる。薬を飲んでいる人ほど相互作用の注意も必要です。僕は「試すなら一つずつ」「体調の記録を取る」「不安なら医師に聞く」を基本にしています。

結局、効いている実感が出やすいのは、派手なものより「睡眠」「運動」「カフェインとアルコールの量」「仕事の境界線」みたいな地味な部分でした。地味って強いです。


HSPが“人の怖さ”と一緒に生きるための実務

1)怖さが出たら、まず体を先に落ち着かせる

怖さが出たとき、頭の中で説得しようとしてもだいたい負けます。感情の波が強いからです。だから先に体。

僕がよくやるのは、吐く息を長くすること。4秒吸って、6秒吐く。これを数回。たったそれだけで、手の震えや胸のざわつきが少し落ちる日があります。

「そんなので変わる?」と思う人もいると思います。分かります。僕も最初は疑っていました。でも、変わる日がある。変わる日があるなら、手札に入れておく価値はあります。

2)怖さをゼロにしない。扱えるサイズにする

人が怖いのを完全に消す、という目標にすると詰みます。消えない日が来るから。すると自己否定が増える。怖さに加えて、自己否定まで背負うのは重い。

僕は途中から「怖さを消す」ではなく「怖さを小さくする」に切り替えました。すると不思議と進みます。現実が動く目標だからだと思います。

3)コミュニケーションを“非同期”に寄せる

フリーランスで続けてこれた理由の一つは、対面だけが戦場じゃないからです。文章なら呼吸できる。返答を作れる。相手の顔色を見ながら即答しなくていい。

もちろん全部は無理です。それでも、やり取りの比率を少しだけ変える。電話よりメール、会議より議事録、即レスより翌朝返信。これだけで消耗が減ります。

4)境界線を「短い一文」で用意する

HSPは、相手に合わせるのが得意な人が多いです。得意だから、やりすぎる。やりすぎて、終わったあとに倒れる。

だから境界線を、短い言葉で用意しておくといい。たとえば「今日は集中日なので夕方に返します」「この件は明日10時に確認します」。この一文があるだけで、相手も自分も安心します。

境界線って冷たいものじゃありません。長く関係を続けるための柵です。柵がないと、踏まれて終わる。

5)“反省会”をメモに移して、頭から降ろす

人が怖い人ほど、帰宅後に反省会が始まりやすい。布団に入っても会話が再生される。自分の心が自分を追いかけてくる。

僕は「反省会をやめる」より、「反省会を紙に移す」を優先しました。メモに書く。短くでいい。「気になってること」「次回はこう言う」。書いたら閉じる。頭の中のタブを一枚だけ閉じる感じです。


それでも苦しいとき、頼っていい場所

人が怖い状態が長く続いて、睡眠や食事が崩れる。仕事の手が止まる。希死念慮が出る。そういうときは、ひとりで抱えないでください。これは根性の問題ではなく、治療や支援の領域に入ってきます。

公的情報としてまとまっていて分かりやすいのは、厚労省の「こころの耳」です。読むだけでも、少しだけ呼吸がしやすくなる人がいます。
厚労省:こころの耳(働く人のメンタルヘルス)


人が怖いままでも、人生は進められる

僕はいまだに、人が怖い日があります。10年以上通院しても、完全には消えない。たぶんこれからもゼロにはならないと思います。

でも、ゼロじゃなくてもいい。怖さがあっても、仕事は続けられた。フリーランスとして、休職せず、なんとか形にしてきた。筋トレや鍼、習慣の改善で、少しずつ「自分の扱い方」も分かってきた。

怖さは欠陥じゃない。危険を避けて生き延びるための機能が、ちょっと敏感なだけ。敏感なら、設計すればいい。扱えるサイズにすればいい。

今日いきなり世界が優しくならなくても、あなたの手の内は増やせます。呼吸、境界線、非同期、回復の型。小さくていい。小さいものが積み上がると、怖さは人生の中心から外れていきます。

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