ジムに通い始めて1年半を過ぎたあたりから、妙にはっきり感じる変化がありました。
電車で立っているのが、前ほどつらくない。
踏ん張るのが、前より明らかにラク。
疲れていても、体のどこかに「まだ持つ」という芯が残っている。
たぶん、筋肉がついたというだけじゃないんです。
もちろん脚力は上がっている。でもそれ以上に、「崩れにくい感じ」が出てきた。立つ、支える、耐える。そういう土台の感覚が変わってきた気がします。
その実感に一番つながっている種目のひとつが、ブルガリアンスクワットでした。
見た目は地味です。両足で大きなバーベルを担ぐわけでもない。なのに、終わったあとの疲労感と“効いた感じ”が深い。
この記事では、ブルガリアンスクワットがなぜ効くのかを、できるだけ実生活に引き寄せながらまとめます。
精神安定という少し大きな言葉も使いますが、これは「ブルガリアンスクワットだけで心の問題が全部解決する」という話ではありません。もっと現実的な話です。
下半身をしっかり鍛えることが、結果としてメンタルの土台にも効いてくる。そこを科学的な情報も交えながら整理していきます。
ブルガリアンスクワットは、派手じゃないのに強い
ブルガリアンスクワットは、後ろ足を台に乗せて行う片脚系のスクワットです。英語では Bulgarian Split Squat、もしくは rear-foot-elevated split squat と表記されることもあります。
研究論文では、ブルガリアンスクワットは片脚の筋力、バランス、機能的なパフォーマンスを高める目的で広く使われている、と整理されています。
参考:Targeted muscle activation in Bulgarian split squat variations(2025, PMC)
さらに、2021年のバイオメカニクス研究では、ブルガリアンスクワットは通常のバックスクワットと同じく股関節主導の種目だが、膝への要求が比較的少なく、片脚での股関節伸展に焦点を当てやすいと報告されています。
参考:Biomechanical Differences Between the Bulgarian Split-Squat and Back Squat(2021, PMC)
この「股関節主導」という言葉、少し分かりにくいですよね。
要は、太ももの前だけで頑張るというより、お尻、ハムストリングス、体幹まで巻き込んで全身で支える感じです。だから終わったあと、脚だけじゃなく「体の芯」が疲れる。そこが良い。
なぜ“精神安定にも”と言えるのか
ここは誤解のないように言っておきたいところです。
ブルガリアンスクワット単体に「不安を直接治療する」みたいな医学的な位置づけがあるわけではありません。
ただ、筋力トレーニングを含む運動全体には、メンタル面への良い影響がかなりはっきり出ています。
WHOは2024年のファクトシートで、身体活動は成人において抑うつや不安の症状を減らし、脳の健康やウェルビーイングを改善すると明記しています。
参考:WHO:Physical activity(2024)
さらに、2024年のBMJの大規模な系統的レビューとネットワークメタ解析では、運動はうつ症状に対して有効で、とくにウォーキング/ジョギング、ヨガ、筋力トレーニングが効果的で、筋力トレーニングは受け入れられやすい(続けやすい)選択肢のひとつだとまとめられています。
参考:Noetel et al., 2024(PubMed / BMJ)
僕はこの結果にかなり納得しています。
筋トレをしていると、不安が消えるわけではありません。でも、体が整うと不安に飲み込まれにくくなる。落ちても戻れる。そういう感じがあるんです。
特にブルガリアンスクワットは、片脚で支えるぶん集中が必要です。余計なことを考えているとフォームが崩れる。つまり、嫌でも“今ここ”に注意が戻る。
これが、思った以上に頭の雑音を減らしてくれます。
僕自身が感じた変化 ─ 脚力より「踏ん張り」が育った
ジムに通って1年半以上。種目はいろいろやっていますが、ブルガリアンスクワットを入れてから、下半身の安定感が一段上がった感覚があります。
混んだ電車で立ちっぱなしでも、前ほどつらくない。
階段の上り下りで、疲れ方が違う。
仕事で座りっぱなしの日でも、夕方に脚が“死んだ感じ”になりにくい。
何より大きいのは、「体が踏ん張れる」という感覚が、気持ちにも波及することです。
しんどい日って、体と心が一緒に崩れます。逆に、体に少し余力があるだけで、メンタルも踏ん張れる場面がある。
もちろん、筋トレで全部解決はしません。人間関係の悩みも、仕事の不安も、トレーニングで魔法みたいに消えるわけじゃない。
ただ、倒れにくくなる。これが本当に大きい。
ブルガリアンスクワットの何がそんなに良いのか
理由は、大きく3つあると思っています。
ひとつ目は、片脚ずつ鍛えられること。
人の体は、意外なくらい左右差があります。片方だけ使いやすい、片方だけ弱い。ブルガリアンスクワットは、それをごまかせません。だから効く。
二つ目は、重い重量がなくても強度が出やすいこと。
バックスクワットみたいに大きなバーベルがなくても、片脚になるだけで十分きつい。ダンベル1つでも成立しやすい。忙しい人には、この「準備が重くない」のがかなり重要です。
三つ目は、体幹まで含めた安定性が必要なこと。
ぐらつく、踏ん張る、支える。その繰り返しで、下半身だけじゃなく“姿勢の持ち方”が変わってきます。
片脚系スクワットと両脚スクワットを比べた研究でも、後ろ足を高くした片脚スクワットでは、二頭筋群(ハムストリングスの一部)などに高い活動が見られる報告があります。
参考:Muscle Activity in Single- vs. Double-Leg Squats(2014, PMC)
フォームの考え方 ─ まずは「前脚が主役」
細かいテクニックを増やしすぎると、逆に分からなくなります。
最初はこれだけで十分です。
前足は、足裏全体で床を踏む。
後ろ足は、支えるというより添える。
下がるときに急がない。上がるときに前足で押す。
この種目、後ろ足でなんとかしてしまう人が多いです。僕も最初そうでした。すると前脚に入るべき刺激が逃げる。お尻にも入りづらい。
だから「前脚が主役」を先に決めてしまう。
2025年の研究では、体幹をやや前傾させると、お尻やハムストリングスといった後ろ側の筋群の活動が高まりやすいと報告されています。
参考:Targeted muscle activation in Bulgarian split squat variations(2025, PMC)
つまり、
上体を比較的立てる → 太もも前寄りに感じやすい
少し前傾する → お尻・ハム寄りに入りやすい
という調整がしやすい。ここはブルガリアンスクワットの面白いところです。
科学的な目安に沿った、おすすめの組み方
何度も見返せるように、かなり実務寄りにまとめます。
まず大枠として、WHOは成人に対して、筋力トレーニングを週2日以上行うことを勧めています。
参考:WHO 2020 Guidelines on physical activity and sedentary behaviour
さらに、ACSM(米国スポーツ医学会)のポジションスタンドでは、初心者の筋力トレーニング頻度は週2〜3回、負荷はおおむね6〜12回で限界が来る範囲、休憩は1〜2分が基本とされています。また、目標回数を1〜2回超えてこなせるようになったら、負荷を2〜10%上げるのが推奨されています。
参考:ACSM Position Stand:Progression Models in Resistance Training for Healthy Adults
これをブルガリアンスクワットに落とすと、こんな感じです。
| レベル | 頻度 | 回数 | セット数 | 休憩 | 目安 |
|---|---|---|---|---|---|
| はじめて〜初心者 | 週2回 | 片脚6〜8回 | 2〜3セット | 90秒〜2分 | まずは自重か軽いダンベル |
| 慣れてきた人 | 週2〜3回 | 片脚8〜12回 | 3〜4セット | 1〜2分 | RPE7〜8くらいで止める |
| 強度を上げたい人 | 週2回 | 片脚5〜8回 | 3〜5セット | 2〜3分 | フォームが崩れない重さを優先 |
RPEというのは、「あと何回できそうか」の主観です。
RPE7〜8なら、まだ2〜3回は残せる感じ。ここが続けやすいし、怪我もしにくい。
僕ならこう組む、実際に続けやすいメニュー
平日も仕事があるし、毎回ジムに全力は出せません。だから僕は、かなり現実寄りに組みます。
脚の日のメインとして入れるなら、最初はこうです。
ブルガリアンスクワット 3セット
片脚10〜15回
インターバルは90秒〜2分
終わったあとにレッグカールかヒップヒンジ系を軽く足す
このくらいでも、十分にきついです。
むしろ、初期は欲張らないほうがいい。ブルガリアンスクワットはフォームが崩れると、一気に「ただしんどい種目」になります。
もし家でやるなら、自重で片脚6回ずつからでもいい。
その代わり、下ろすときだけ丁寧に。3秒くらいかけて落ちる。これだけで一気に変わります。
メンタル面で感じやすいメリット
ここは科学と体感が重なるところです。
ブルガリアンスクワットみたいな下半身の強い種目をやると、終わったあとに余計なことを考えにくくなります。単純に、疲れるから。
でも、その疲れ方が嫌な消耗じゃない。むしろ「ちゃんと使った」疲れです。
頭がうるさい日に、こういう種目は効きます。
悩みが消えるわけではない。でも、悩みを抱えたままでも一度整う。心が静かになるというより、雑音の音量が下がる感じです。
WHOの整理でも、身体活動は精神面の健康、睡眠、認知に良い影響があるとされていますし、BMJのレビューでも筋力トレーニングは抑うつ症状の改善と関連していました。
参考:WHO:Physical activity
参考:Noetel et al., 2024(PubMed / BMJ)
「精神安定にも」と言うと大げさに見えるかもしれません。
でも、心だけで安定しようとするより、体から先に整えたほうがうまくいく日がある。これはかなり本当だと思っています。
よくある失敗
まず、深くしゃがみすぎようとしてバランスを崩すこと。
次に、後ろ足に頼りすぎること。
そして、重さを急いで上げること。
ブルガリアンスクワットは、見た目より難しい種目です。
最初の数週間は「効かせる」より「慣れる」。ここを飛ばすと嫌いになります。
膝や股関節、腰に痛みがある人は、フォームを無理に押し通さないでください。必要ならトレーナーや理学療法士など、動作を見られる人に一度チェックしてもらったほうが早いです。
最後に ─ ブルガリアンスクワットは、派手さより“生きる土台”に効く
この種目の良さは、見た目の変化だけじゃありません。
電車で立っていられる。長時間歩ける。疲れても崩れにくい。気持ちが少し踏ん張れる。
そういう、生活の下のほうにある力に効いてきます。
僕自身、ジムに通って1年半以上経って、明らかに「踏ん張る」体力が身についてきたと感じています。
それは筋肉の話でもあるし、自分を支える感覚の話でもある。たぶん、その両方です。
もし今、何かひとつ下半身種目を軸にするなら。
ブルガリアンスクワットは、かなり良い候補だと思います。地味だけど、裏切らないので。

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